テスト make some noise

つづらをりはるけき山路登るとて路に見てゆく竜胆の花
散れる葉のもみぢの色はまだ褪(あ)せず埋めてぞをる竜胆の花を
さびしさよ落葉がくれに咲きてをる深山竜胆の濃むらさきの花
摘みとりて見ればいよいよむらさきの色の澄みたるりんだうの花
越ゆる人まれにしあれば石出でて荒き山路のりんだうの花
笹原の笹の葉かげに咲き出でて色あはつけきりんだうの花

 その頃の日向は、ほんたうにまだ開けてゐなかつたものですから、汽車は全然通じてゐず、港から港へ寄る汽船の數も、極く少なかつたのです。で、汽船を見ることがまだ珍しうございました。
 その汽船を眺めてゐるうちに、ふと、ある一つの聯想がわたしの頭に浮びました。そして、そのことを武ちやんに話しました。
 話とはかうなのです。ツイ一兩日前に、郷里の母親からわたしに手紙が來て、今度急に思ひたつて都農(つの)の義兄と一緒に讚岐(さぬき)の金比羅(こんぴら)さまにお參りする。そして、そのついでに大阪見物をもして來る、歸りには何かお土産を買つて來るがお前は何がほしいか、こちらあてに返事を出したのではもう間に合はぬから、何日までに細島港の船問屋日高屋に宛てゝ、手紙を出せばそれを受取つて汽船に乘る、と、いつて來てあつたのです。やれ嬉しやとあれを考へこれを考へ、土産物の種類を三つも四つも書きたてゝ、ツイ昨日細島港あてに手紙を出したところだつたのです。
 得意氣に、わたしがその土産物の名を竝べたてゝてゐると、武ちやんは默つてそれを聞いてゐましたが、やがて考へ深さうな顏をしてわたしに言ひました。

 柚子、柿、蜜柑、夏蜜柑、いづれもみな今が花どきである。
『晝はさうでもないが、夜は蜜柑の花の匂ひで庭はたいへんネ』昨日か、妻が言つてゐた。夜はわたしは庭までも出たことがない。然し晝間は三四度づつも此等の木の間をさまよふ。
 柘榴(ざくろ)もいまたくさんな蕾をつけて居る。一本はやゝ古木(こぼく)、一本はほんの若木である。古木の方は實柘榴(みざくろ)だが、わか木の方は花柘榴らしい。たくさんついてゐる蕾が甚だ大きい。柘榴の實は見るべきである。枝にあるもよく、とつて來て机の上にころがすもよい。
 梨は先づ花だけであらう。これは普通枝を棚にわたさせ、棚の下に幾つもの實が垂れてゐるといふものであるが、惜しいかなみな紙袋をかぶらされる。私は棚にもせず、袋もかぶせず、出來るなら松の木位ゐの大きさに伸び、頭大の實を結べよと祈らるゝのだが、わが庭の梨の木はまだわが長男中學一年生のたけに及ばぬのである。